第3回 コーヒーサロン

地域をつなぐ:なぜ地域研究者が東ティモールのコーヒーを売り歩いているのか  (終了)

下記の通り東文研セミナーを開催します。コーヒーに関心のある方、東チモールに関心のある方、環境と開発に関心のある方、東チモールのコーヒーを飲んでみたい方、その他、さまざまな関心を持つ人が東チモールのコーヒーを飲みながら一緒に考えてみませんか。どなたでも参加できます。

日時:2005年12月7日(水)18時~20時
場所:東京大学東洋文化研究所 大会議室(3階)
報告者:阿部健一 助教授(国立民族学博物館・地域研究企画交流センター)

報告の趣旨:

東ティモールは、2002年にようやく念願の独立を果たす。世界中が今世紀最初の国の誕生を祝ったが、人口80万人の山がちの小国は、食糧の自給もままならない世界の最貧国でもある。唯一、資源といえるのはコーヒー。国民の4分の1が、収入のほとんどをコーヒーに頼っている。

コーヒーは、農薬も化学肥料も使わず、除草も剪定も行わず、庇陰樹の下で天然に近い状態で「栽培」されている。そのため収量は低いが、幸運なことに品質は高い。標高1000以上の高地で育つ東ティモールのコーヒーの潜在的品質は、ブルーマウンテンにも匹敵すると言われている。しかし、これまでは市場が限られていたこともあり、品質管理へのインセンティヴは低く、収穫後の処理も不十分なまま、きわめて安い価格で買い上げられてきた。

今回は、収穫後の処理を指導することで高い品質の豆を生産し、高価格で買い上げようとする試みを紹介したい。東ティモールのコーヒーは、単に味が良いだけでない。貧しくて購入できなかっただけなのだが、結果として無農薬栽培である。また、草地に庇陰樹を植えて、10年ほど木が大きくなってからコーヒーを植裁する。昔ながらの植え付け方法は、「環境保全的な栽培」でもある。

この東ティモールのコーヒーを実際に味わってもらいながら、さらに話を続けたいのは、地域を「つなぐ」ということについてである。地球上のさまざまな地域の相互依存関係が、いびつかつ短絡的に強まっているのが現代世界である。こうしたなか、外部者として他地域のことをもっともよく理解している[はずの]地域研究者は、地域と地域を「正しく」つなぐ「媒介者」の役割を果たすことができるのでないか。東ティモールのコーヒーをとりあげ、生産地と消費地を「正しく」結ぶ(mediation)ということを考えてみたい。 (阿部健一)

連絡先:東京大学 東洋文化研究所 池本幸生 Tel. 03-5841-5877